第 7 章 Exploit
この章で分かること
相手がずれている方向に、こちらもずらす
GTO と Exploit の二層構造
順番を逆にすると、必ず崩れます
第 1 層:GTO 寄りの基準線
- 相手が誰か分からない時のデフォルト
- 搾取されない(負けない)ことが目的
- ここが無いと、ズレを測る基準が持てない
第 2 層:Exploit の調整
- 相手の逸脱を観測してから、基準線を動かす
- 勝ちを最大化するのが目的
- 調整した分だけ、自分も搾取されやすくなる
基準 → 観測 → 調整。この順番だけは崩さないでください。
なぜ順番が大事か
基準線がないまま「この人は降りそう」と感じて調整すると、それは調整ではなく、ただの気分です。
基準を持っている人だけが、ズレを測れます。
逆に、基準線から一歩も動かないのも損です。母集団には明確な偏りがあり、そこを取らないのは利益を捨てているのと同じです。
プレイヤー分類
VPIP / PFR は目安。ラベルより、具体的な行動を見ます
| タイプ | VPIP / PFR の目安 | 最大の特徴 |
|---|---|---|
| Nit | 12 / 10 | 強い手しか入れない。ブラフを打たない |
| TAG | 22 / 18 | 標準的な勝ち組。大きな穴は少ない |
| LAG | 28 / 23 | 広く入り、攻撃的。ブラフ頻度が高い |
| Calling Station | 45 / 8 | 降りない。ブラフが通らない |
| Maniac | 50 / 35 | 無差別に攻撃。分散が非常に大きい |
| Passive Fish | 40 / 6 | 入るがレイズしない。ベットは強い意味 |
ラベルは仮説のラベルであって、証拠ではありません。次のページの観測基準とセットで使います。
タイプ別の調整方向
どちらに、どれだけずらすか
| Calling Station | ブラフを減らし、シンバリューを厚くする |
| Nit | ブラフを増やし、強い手には全力で降りる |
| オーバーブラファー | ブラフキャッチを増やす。弱いペアでも拾う |
| アンダーブラファー | 限界的なコールを全部やめる。降りてよい |
| Passive(ベットが少ない) | 相手のベットは強い。レイズにはさらに慎重に |
| Aggressive(頻度が高い) | チェックレイズとブラフキャッチを増やす |
| Maniac | レンジを締め、待ってから強い手で当てる |
調整は 1 方向ずつ。「ブラフを減らしつつコールも減らす」のような同時調整は、たいてい矛盾します。
何回見たら、仮説を強めてよいか
ここを決めておかないと、思い込みで戦略を変えてしまいます
| 観測回数 | 扱い方 | 行動 |
|---|---|---|
| 1 回 | 仮説の種。偶然の可能性が高い | 何も変えない |
| 2 〜 3 回 | 傾向の候補。同じスポットに限る | 小さく調整する |
| 5 回以上 | 傾向として扱ってよい | はっきり調整する |
| 10 回以上 | 戦略変更の根拠になる | 基準線を動かす |
例外:珍しいスポットほど情報価値が高い
- リバーのチェックレイズは、そもそも頻度が 2 〜 5% しかない行動
- だから 2 回見ただけでも「この人は打つ側だ」という情報になる
- 逆に C-bet のような高頻度の行動は、10 回見ないと傾向と言えない
判断基準:その行動が、母集団平均でどれくらい珍しいか。珍しいほど、少ない観測で意味を持ちます。
母集団の典型的なリーク
相手が誰か分からない時の、初期値として使えます
| リバーのブラフが足りない | 大きいベットほど顕著。降りてよい |
| BB のディフェンスが狭すぎる | オープンの頻度を上げる価値がある |
| 3bet に対して降りすぎる | 3bet ブラフの価値が上がる |
| C-bet が多すぎる | チェックレイズとフロートが効く |
| ターンで諦めすぎる | フロップのコールを広げてよい |
| 弱いペアで降りられない | シンバリューを厚く取れる |
これらは傾向であって、目の前の相手に当てはまる保証はありません。観測で上書きしてください。
ベットサイズから何を読んでよいか
読み違えると、そのまま逆用されます
読んでよいこと
- サイズが状況ごとに変わる人か、固定の人か
- 強い手の時だけ大きくする傾向があるか
- 同じスポットで、過去に何を見せたか
読んではいけないこと
- 1 回のサイズだけで手の強さを断定すること
- サイズと強さの関係を、全員共通だと思うこと
タイミング:オンライン
- 即コール=限定的な手(強くも弱くもない)が多い
- 長考後のレイズ=強い側に寄ることが多い
- 即ベット=事前に決めていた=レンジで打っている
タイミング:ライブ
- 動作の大きさは信頼度が低い(演技が入る)
- ベット前の準備動作やチップの持ち方の方が安定
テルは証拠ではなく、情報のひとつです。レンジ分析の結論を覆すのではなく、ぎりぎりの判断を片側に倒す材料として使ってください。
Exploit のリスク
調整には必ず代償があります
逆用される
ブラフを減らせば、相手は安全に降りられます。調整は、相手にも読まれます。
サンプルが足りない
3 回の観測で戦略を変えると、偶然に合わせて戦略を歪めることになります。
戻し忘れる
相手が変わっても調整を続けてしまう。テーブルが変われば基準線に戻します。
目安として、相手が明確に弱い(Station・Nit)場合は大きく調整し、相手が普通に見える場合は基準線から動かないのが安全です。中級者相手の細かい調整が、最も事故を起こします。