第 9 章 分散と運用
この章で分かること
EV がプラスでも破産する。その理由と対策
これが分散の正体
勝率 3bb/100 の勝ち組が、10 万ハンド打った時の 25 パターン
読み取れること
- 赤線が期待値(+3000BB)
- 灰色はすべて同じ実力の試行
- 10 万ハンド後でも 16% はマイナス
ドローダウン
- 最大の落ち込みの中央値は約 2100BB
- 最悪のケースで約 6100BB
- 全員、実力は同じです
シミュレーション:勝率 3bb/100、標準偏差 90bb/100 を 10 万ハンド × 25 回。実力が同じでも、結果はこれだけ散らばります。
リスク・オブ・ルイン
式:exp( −2 × 勝率 × バンクロール ÷ 標準偏差² )
破産確率(%)(標準偏差 90bb/100、近似式から計算)
- 勝率 1bb/100
- 勝率 3bb/100
- 勝率 5bb/100
| バンクロール(BB) | 勝率 1bb/100 | 勝率 3bb/100 | 勝率 5bb/100 |
|---|---|---|---|
| 500 | 88.4% | 69% | 53.9% |
| 1000 | 78.1% | 47.7% | 29.1% |
| 2000 | 61% | 22.7% | 8.5% |
| 3000 | 47.7% | 10.8% | 2.5% |
| 5000 | 29.1% | 2.5% | 0.2% |
| 10000 | 8.5% | 0.1% | 0% |
この式が言っていること
- 勝率が高いほど破産しにくい
- 分散が大きいほど破産しやすい
- バンクロールは指数的に効く
読み方の例
- 勝率 3bb/100 でも 1000BB では 48% が破産
- 3000BB で 11%、5000BB で 2.5%
- EV がプラスでも、資金が足りなければ破産する
連続近似による概算です。実際にはショット・ストップロス・引き出しで変動します。
バンクロール基準
上の計算から逆算した、現実的な目安です
| 状況 | 必要バンクロール | 破産確率の目安 |
|---|---|---|
| 最低限(リスク許容度が高い) | 1500 〜 2000BB | 23 〜 33% |
| 標準(専業でないなら) | 3000BB | 約 11% |
| 安全(生活費を賄うなら) | 5000BB 以上 | 2.5% 以下 |
| トーナメント(分散が桁違い) | 100 バイイン以上 | - |
ショットテイキング
- 上のステークスに挑戦する時のルール
- 例:新ステークスで 10 バイイン分の資金を用意
- 5 バイイン負けたら即座に戻る
ストップロス
- 1 セッションで失う上限を先に決める
- 例:3 バイインで終了
- 理由は資金ではなく、判断力の低下を防ぐため
生活費とバンクロールは、物理的に別の口座に分けてください。混ざった時点で、判断は必ず歪みます。
ティルトの管理
分散は避けられませんが、反応は選べます
よくある引き金
- バッドビート(EV では勝っていた敗北)
- 自分のミスに対する怒り
- 負けを取り返そうとする(損失追跡)
- 疲労と睡眠不足
起きていること
- レンジが広がり、降りられなくなる
- ブラフが増え、シンバリューが減る
- ステークスを上げたくなる
対策(事前に決めておく)
- ストップロスを数字で決めておく
- セッション前に「今日の目標は判断の質」と決める
- 3 ハンド連続で迷ったら 5 分休む
- 結果ではなく、判断でセッションを評価する
事後の扱い
- ティルトしたハンドは、翌日にレビューする
- その場で反省すると、さらに歪む
ティルトは性格の問題ではなく、事前のルール設計の問題として扱ってください。
ゲームセレクション
どのテーブルで打つかは、技術と同じ重さを持ちます
| テーブル平均 VPIP | 高いほど良い。35% 以上なら優良 |
| リンプの多さ | リンプが多いテーブルは弱い傾向 |
| 席の選び方 | 弱い相手の左(後ろ)に座る |
| 強い相手の位置 | 強い相手は自分の右(前)が望ましい |
| レーキ | 勝率に直接効く。キャップの有無を確認 |
| 有効スタック | 深いほど技術差が出やすい |
| 自分の状態 | 疲れている日は、打たないのも選択 |
同じ実力でも、テーブル選びで勝率は数 bb/100 変わります。これは戦略の一部です。